令和5年1月1日より特定建設業の許可・監理技術者の配置・施工体制台帳の作成を要する下請代金額の下限が変更になります。建設業の許可は、発注者から直接請け負った工事について下請に出す契約金額により「一般建設業」と「特定建設業」の別に区分して行います。 この区分は、近年の工事費の上昇を踏まえ、金額要件の見直しが行われました。
特定建設業の許可及び監理技術者の配置が必要となる下請契約の請負代金の額の下限について、建築一式工事にあっては6,000万円から7,000万円に、建築一式工事以外の建設工事にあっては4,000万円から4,500万円に、それぞれ引き上げられました。併せて、民間工事において施工体制台帳の作成が必要となる下請契約の請負代金の額の下限についても同様の引上げられます。
また、工事現場ごとに配置が求められる主任技術者又は監理技術者を専任で配置することが必要となる重要な建設工事の請負代金の額について、建築一式工事にあっては7,000万円から8,000万円に、建築一式工事以外の建設工事にあっては3,500万円から4,000万円に、それぞれ引き上げます。
改正前 | 改正後 | |
特定建設業の許可・監理技術者の配置・施工体制台帳の作成を要する下請代金額の下限 | 4,000万円 (建築工事業 6,000万円) | 4,500万円 (建築工事業 7,000 万円) |
主任技術者及び監理技術者の専任を要する請負代金額の下限 | 3,500万円 (建築工事業 7,000万円) | 4,000万円 (建築工事業 8,000万円) |
特定専門工事の下請代金額の上限 | 3,500万円 | 4,000万円 |
特定建設業の許可及び監理技術者の配置が必要となる工事
発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、下請代金額の下限以上となる下請契約を締結する場合は特定建設業の許可が必要となり、当該工事現場に監理技術者の配置が必要となります。監理技術者として建設工事に配置される方は、監理技術者資格者証の交付を受け、かつ、監理技術者講習を修了していることが必要です。
発注者から直接請け負う請負金額については、一般・特定に関わらず制限はありません。
発注者から直接請け負った1件の工事が規模の大きな工事であっても、その大半を自社で直接施工するなど、下請契約の総額が下限未満であれば、一般建設業の許可で下請契約可能です。
一次下請負人が二次下請負人に工事を下請施工させる場合には特定建設業の許可は不要であり、一般建設業の許可で足りることとなります。
下請代金の制限は、発注者から直接請け負う建設工事(建設業者)に対するものであることから、下請負人として工事を施工する場合には、特定建設業許可がなくても契約可能です。
主任技術者及び監理技術者の専任が必要となる工事
公共性のある工作物に関する重要な建設工事(個人住宅を除き、ほとんどの工事が対象)で工事1件の請負金額が上記の下限金額以上の場合に配置される主任技術者・監理技術者等は、元請、下請の区別なく工事現場ごとに専任の者でなくてはなりません。
「専任」とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していること意味するものであり、必ずしも当該工事現場への常駐(現場施工の稼働中、特別の理由がある場合を除き、常時継続的に当該工事現場に滞在していること)を必要とするものではありません。他の工事現場の監理技術者等との兼務は特別な場合を除き認められません。
監理技術者を専任で置くことが必要となる建設工事において、発注者から直接請け負った特定建設業者が、監理技術者補佐を配置すれば、特例監理技術者として2件まで工事現場で兼務することができます。特例監理技術者を置く場合には、監理技術者補佐を当該工事現場ごとに専任で配置しなければなりません。
主任技術者の設置が不要な「特定専門工事
特定専門工事の元請負人及び下請負人は、元請負人の設置する主任技術者が同一の種類の建設工事に関し1年以上指導監督的な実務経験を有し、工事現場に専任で設置される場合には、その合意により、下請負人は主任技術者を設置が不要となりました。ただし、この場合には下請負人は建設工事を他人に請け負わせることはできません。
特定専門工事とは、「土木一式工事又は建築一式工事以外の建設工事のうち、その施工技術が画一的であり、かつ、その施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとして政令で定めるもの」とされており、現時点では、政令で「鉄筋工事及び型枠工事」と定められています。