労働者派遣事業では、派遣が禁止されている業務があり、建設業務への労働者派遣が禁止されています。労働者派遣のできない業務(適用除外業務)が「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(通称「労働者派遣法」)及びその施行令等によって決められています。
1.適用除外業務
以下の業務については、一般労働者派遣事業、特定労働者派遣事業を問わず労働者派遣事業を行うことはできません。
(1)港湾運送業務
(2)建設業務
(3)警備業務
(4)病院・診療所等における医療関連業務
(5)弁護士、社会保険労務士等のいわゆる「士」業務
2.建設業務の適用除外業務
建設業務は、「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの準備の作業に係る業務」をいうが、この業務は建設工事の現場において、直接にこれらの作業に従事するものに限られる。したがって、例えば、建設現場の事務職員が行う業務は、これによって法律上当然に適用除外業務に該当するということにはならないので留意すること。
土木建築等の工事についての施工計画を作成し、それに基づいて、工事の工程管理(スケジュール、施工順序、施工手段等の管理)、品質管理(強度、材料、構造等が設計図書どおりとなっているかの管理)、安全管理(従業員の災害防止、公害防止等)等工事の施工の管理を行ういわゆる施工管理業務は、建設業務に該当せず労働者派遣の対象となるものであるので留意すること。
なお、工程管理、品質管理、安全管理等に遺漏が生ずることのないよう、請負業者が工事現場ごとに設置しなければならない専任の主任技術者及び監理技術者については、建設業法(昭和24年法律第100号)の趣旨に鑑み、適切な資格、技術力等を有する者(工事現場に常駐して専らその職務に従事する者で、請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあるものに限る。)を配置することとされていることから、労働者派遣の対象とはならないものとされていることに留意すること。
また、派遣労働者が従事する業務の一部に「建設業務」に該当する業務が含まれている場合も違法な労働者派遣となるものである。
3.建設業者で労働者派遣が禁止されていない業務
派遣が禁止されているのは、建設現場や建築現場で直接作業に従事する者です。直接にする作業であることが前提となります。
建設現場の現場事務所での事務員、CADオペレーター、施工管理の業務などは、「建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業」に直接従事しないので労働者派遣は可能です。
簡易な作業でも建設業務に該当する場合がありますので注意が必要です。
4.派遣と請負の違い
請負契約とは、当事者の一方がある仕事を完成させ、その相手方が、仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約です。
この場合、仕事の注文主が請け負った人に対して仕事のやり方などを具体的に指示することはできません。
派遣労働者は派遣先から指揮命令を受けて働きます。派遣先の指揮命令下にあるかないかがポイントです。
契約上は請負となっていても、自己の労働者を、他人の指揮命令の下で建設の業務で働かせることは、労働者派遣に該当するため、労働者派遣法違反となります。
他人の労働者を受け入れて、自己の指揮命令の下で建設の業務で働かせることも労働者派遣法違反となります。