1.一般労働者派遣事業とは
労働者派遣事業とは、派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事させることを業として行うことをいいます。労働者派遣事業には、次の2種類があり、常時雇用される労働者だけを労働者派遣の対象として行う労働者派遣事業を特定労働者派遣事業といい、特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業を一般労働者派遣事業といいます。
いわゆる登録型派や臨時・日雇の労働者を派遣する事業が一般労働者派遣事業に該当します。常時雇用される労働者以外の派遣労働者を1人でも派遣する場合は、一般労働者派遣事業の許可が必要になります。
特定労働者派遣事業は届出制のため届出が受理されれば即日特定労働者派遣事業を行うことができますが、一般労働者派遣事業は許可制のため申請から許可が下りるまでに3ヵ月程度かかります。
2.適用除外業務
次の業務では、特定労働者派遣事業を行うことができません。
(1)港湾運送業務
(2)建設業務
(3)警備業務
(4)病院・診療所等における医療関連業務
(5)弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士等のいわゆる「士」業務
3.一般労働者派遣事業の許可申請手続き
(1)申請方法
・ 一般労働者派遣事業を行おうとする場合は、下記(2)の書類を事業主の主たる事務所を管轄する都道府県労働局に提出してください。
・ 許可を受けるためには、欠格事由に該当せず、許可基準を満たす必要があります。
・ 申請に先立ち、派遣元責任者が派遣元責任者講習を受講しておく必要があります。この講習は、派遣元事業所の雇用管理及び事業運営の適正化に資することを目的とするものです。講習は、厚生労働省に開催を申し出た団体が実施しています。
(2)提出書類
① 一般労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)3通(正本1通、写し2通)
② 一般労働者派遣事業計画書(様式第3号)3通(正本1通、写し2通)※
③ 次表に掲げる添付書類2通(正本1通、写し1通)
○ 法人の場合
・定款又は寄附行為
・登記事項証明書
・役員の住民票(本籍地の記載のあるもの)の写し及び履歴書
・最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書
・最近の事業年度における法人税の納税申告書の写し(税務署の受付印のあるもの)
・法人税の納税証明書(最近の事業年度における所得金額に関するもの)
○個人の場合
・住民票(本籍地の記載のあるもの)の写しび履歴書
・貸借対照表及び損益計算書(所得税青色申告決算書の写し)
・不動産の登記事項証明書及び固定資産税評価額証明書(白色申告又は青色申告で簡易な記載事項の損益計算書作成の場合)
・預金残高証明書(納税期末日のもの)
・最近の納税期における所得税の納税申告書の写し(税務署の受付印のあるもの)
・所得税の納税証明書(最近の納税期における所得金額に関するもの)
○法人・個人共通
・事業所の使用権を証する書類(不動産の登記事項証明書又は不動産賃貸借(使用貸借)契約書の写し)
・派遣元責任者の住民票の写し及び履歴書
・個人情報適正管理規程
(3)許可手数料
・ 申請書には、手数料[12万円+5万5千円×(一般労働者派遣事業を行う事業所数-1)]に相当する額の収入印紙を貼付する必要があります。
(4)登録免許税の課税
・ 申請に当たっては、登録免許税[許可一件当たり9万円]を納付し、領収書を許可申請書に貼付しなければなりません。
・ 登録免許税は、国税の収納機関である日本銀行、日本銀行歳入代理店(銀行等や郵便局)又は都道府県労働局の所在地を管轄する税務署に現金で納付します。
(5)申請から許可までの流れ
・ 申請書類の受付後、都道府県労働局で申請書類の審査がなされるとともに、事業の実施を予定する事業所に対し現地での調査が行われます。
・ 当該労働局は、申請に対する審査・調査の結果を厚生労働本省に送付します。
・ 厚生労働本省において、更に審査内容を精査の上、厚生労働大臣から労働政策審議会に諮問します。
・ 労働政策審議会からの答申を踏まえ、厚生労働大臣により申請に対する許可又は不許可が決定されます。
・ 許可の場合は許可証が、不許可の場合は不許可通知書が発行され、当該労働局を通じて申請者に交付されます。
・ 事業者は、交付された許可証を受領することにより事業を開始します。
茨城県の場合、申請は月末締めです。(月内はいつ申請しても同じ)申請月から3か月後の1日に許可が交付されます。
例えば、8月中に申請すると、11月1日に交付されます。
4.欠格事由
次のいずれかに該当する事業者は、一般労働者派遣事業の許可を受けられません。
(1)禁錮刑などに処せられて5年を経過してない場合 又は労働法関係、刑法、暴力行為等処罰に関する法律、 出入国管理法などで違反があり、罰金刑に処せられて5年を経過してない場合。
(2) 破産者で復権していない場合
(3)一般労働者派遣事業の許可を取り消され、又は特定労働者派遣事業の廃止を命じられ、当該取消し又は命令の日から起算して5年を経過していない場合。
(4)一般労働者派遣事業の許可の取消し又は特定労働者派遣事業の廃止の命令の処分の通知あり、自ら一般労働者派遣事業の廃止の
届出又は特定労働者派遣事業の廃止の届出をした場合で、当該届出の日から起算して5年を経過しない場合。
(5)暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者にその事業活動を支配されている場合。
(6)暴力団員等をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用するおそれのある場合。
(7)当該法人の役員)のうちに、上記(1)~(4)又は次のいずれかに該当する者がある場合。
イ 一般労働者派遣事業の許可を取り消された者が法人である場合、又は特定労働者派遣事業の廃止を命じられた者が法人である場合において、当該取消し又は命令の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に当該法人の役員であった者で、当該取消し又は命令の日から起算して5年を経過しないもの
ロ (4)に規定する期間内に一般労働者派遣事業の廃止の届出又は特定労働者派遣事業の廃止の届出をした者が法人である場合において、通知の日前60日以内に当該法人の役員であった者で、当該届出の日から起算して5年を経過しないもの
ハ 暴力団員等
ニ 一般労働者派遣事業について法定代理人から営業の許可を受けていない未成年者であって、その法定代理人(法人である場合は、当該法人の役員)が上記(1)~(4)又は(7)イ~ハのいずれかに該当する者又はその法定代理人(法人である場合に限る。)が上記(1)~(4)のいずれかに該当するもの
5.許可基準
(1)財産的要件
① 基準資産額≧2,000万円×事業所数
資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(「基準資産額」)が2,000万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う事業所の数を乗じた額以上であること。
② 基準資産額≧負債÷7
基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。
③ 自己名義現金預金額≧1,500万円×事業所数
事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う事業所の数を乗じた額以上であること。
基準資産額又は自己名義の現金・預金の額が増加するときは、公認会計士又は監査法人による監査証明を受けた中間決算又は月次決算により確認する。
(2)派遣元責任者に関する要件
派遣元責任者を選任し、配置しなければなりません。派遣元責任者講習を受講して3年以内の者であること
(3)教育訓練に関する要件
①派遣労働者に係る教育訓練に関する計画が適切に策定されていること。
②教育訓練を行うに適した施設、設備等が整備され、教育訓練の実施について責任者が配置される等能力開発体制の整備がなされていること。
③派遣労働者に受講を義務付けた教育訓練について費用を徴収するものでないこと。
(4)事務所に関する要件
事業所について、事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上あるほか、その位置、設備等からみて、一般労働者派遣事業を行うのに適切であること。