水銀は様々な排出源から様々な形態で環境に排出されますが、人体への毒性が強く、食物連鎖により野生生物へも影響をあたえており、世界的な取り組みにより、人為的な排出の削減が必要とされています。
水俣条約は、先進国と途上国が協力して、水銀の供給、使用、排出、廃棄等の各段階で総合的な対策に世界的に取り組むことにより、水銀の人為的な排出を削減し、地球的規模の水銀汚染の防止を目指すものです。
平成25年10月に採択された水俣条約、水俣条約の国内担保法として水銀汚染防止法が平成 27 年 6 月に公布され、水銀の使用用途等が制限されることから、水銀使用製品が今後ますます廃棄物として処分される事態が想定されます。
金属水銀はこれまで有価物として取り扱われており、廃棄物処理法において特別な処理基準は規定されていませんでした。今後、水銀の使用の制限に伴い、廃棄物として取り扱う可能性が想定されることから、水銀廃棄物の環境上適正な処理の在り方を踏まえ、廃棄物処理法施行令改正され水銀使用製品産業廃棄物が定義されました。
水銀使用製品産業廃棄物の対象は、次の①、②、③ に該当する製品が産業廃棄物となったものをいいます。
①:水銀使用製品のうち表に掲げるもの
1 | 水銀電池 | |
2 | 空気亜鉛電池 | |
3 | スイッチ及びリレー(水銀が目視で確認できるものに限る。) | × |
4 | 蛍光ランプ(冷陰極蛍光ランプ及び外部電極蛍光ランプを含む。) | × |
5 | HIDランプ(高輝度放電ランプ) | × |
6 | 放電ランプ(蛍光ランプ及びHIDランプを除く。) | × |
7 | 農薬 | |
8 | 気圧計 | |
9 | 湿度計 | |
10 | 液柱形圧力計 | |
11 | 弾性圧力計(ダイアフラム式のものに限る。) | × |
12 | 圧力伝送器(ダイアフラム式のものに限る。) | × |
13 | 真空計 | × |
14 | ガラス製温度計 | |
15 | 水銀充満圧力式温度計 | × |
16 | 水銀体温計 | |
17 | 水銀式血圧計 | |
18 | 温度定点セル | |
19 | 顔料 | × |
20 | ボイラ(二流体サイクルに用いられるものに限る。) | |
21 | 灯台の回転装置 | |
22 | 水銀トリム・ヒール調整装置 | |
23 | 水銀抵抗原器 | |
24 | 差圧式流量計 | |
25 | 傾斜計 | |
26 | 周波数標準機 | × |
27 | 参照電極 | |
28 | 握力計 | |
29 | 医薬品 | |
30 | 水銀の製剤 | |
31 | 塩化第一水銀の製剤 | |
32 | 塩化第二水銀の製剤 | |
33 | よう化第二水銀の製剤 | |
34 | 硝酸第一水銀の製剤 | |
35 | 硝酸第二水銀の製剤 | |
36 | チオシアン酸第二水銀の製剤 | |
37 | 酢酸フェニル水銀の製剤 | |
備考 | No.19 の顔料は、塗布されるものに限り × 印に該当 する |
②:① の製品の組込製品表に × 印のあるものに係るものを除く)
③水銀又はその化合物の使用に関する表示がされている製品
水銀使用製品産業廃棄物については、他の物と混合するおそれのないように区分すること。また、それらを破損 するおそれのある車両(塵芥車等)を用いない外、破損のおそれのある物(蛍光ランプ等)を運搬する際には緩衝材等を用いて破損防止の措置をとること。なお 水銀は揮発性があるため、高温の環境を避け、大気に流出しないよう配慮することなどが求められます。
産業廃棄物収集運搬業の許可申請においては、「 廃プラスチック類」「廃油」「廃酸」「廃アルカリ」「ガラスくずコンクリートくず及び陶磁器くず」「金属くず」「汚泥 」を取り扱う場合には、「水銀使用製品産業廃棄物を除く」又は「水銀使用製品産業廃棄物を含む」のどちらかを明示する必要があります。