身近な法律

市役所・商工会議所で行政書士による無料相談会が開かれていますが、その相談の8割は相続に関連した相談だそうです。

それだけ皆さん関心があり、また困っているということです。

相続に関しては様々な手続き・トラブルが発生しますのでシリーズとして記事を書いていこうと思います。

まず、相続の始まりは遺言からでなないでしょうか。一般的には遺書(イショ)や遺言(ユイゴン)と言われますが、法的には遺言と書いて「イゴン」と読みます。ユイゴンでも間違いではありませんが。

現在、遺言に関する情報はインターネットや書籍等であふれており、多少勉強すれば誰でも書けるものになっています。

自筆証書遺言で最低限守らなければならないルールは3つです。

1.全文自筆で書かなければならない。ワープロや代筆は不可です。

2.作成日付を明確に書かなければならない。日にちが特定されなければなりません。

3.署名押印しなければならない。認印でも構いませんが実印をお勧めします。

基本的に守らなければならないルールはこれだけです。用紙や筆記用具、書式などは法律による取り決めはありません。

ただ、やはり重要なのは内容です。内容に相続人が納得できない遺産分割があったり、相続内容が不明確になっている場合には結局遺産分割協議が必要になってしまう事もあり、場合によっては相続人同士の争いの元になることもあります。

これでは遺言を残しておくメリットがなくなってしまいます。

やはり遺言を作成する場合には、全て一人で作成しようとせず、事前に相続人と話し合いをおこなったり、相続遺言の専門家へ相談することが円満に相続を行う秘訣だと言えます。

消滅時効とは反対に一定期間の経過によって権利が取得される制度です。

民法で以下のように定められています。

民法第162条
1.20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2.10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

つまり、他人の物を自分の物(動産および不動産)と思い込んで10年間持ち続けると自分の物になってしまい。もう元の所有者から返せと言われる筋合いはない。ということです。

例えば、家を建てるために土地を購入した。不動産屋のミスで公示されている面積より隣の家側に境界線が引かれていた。その土地を購入した本人も隣の人もそのことに気づかずに10年間が経過した場合、後から気が付いてももう土地を返す必要はなくなります。
※ただし、時効取得した土地を第3者に対抗するためには、土地を分筆してもらい所有権移転登記をしなければなりません。

時効制度の存在理由としては、一般に以下のことが挙げられます。

・長年継続した事実状態を法律上も尊重してそのまま正当な権利関係として認める。
・真実の権利関係を立証することの困難さを救済するために時効の主張を認める。
・権利の上に眠る者は保護に値しない。

消滅時効とは、一定期間権利が行使されないとその権利は消滅するという制度です。なんとなく聞いたことがある方も多いと思います。

民法第167条 債権は、10年間行使しないときは消滅する。債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは消滅する。

また、民法や商法には、権利関係を迅速に確定するために、より短い期間で時効が成立する場合がある「短期消滅時効」が存在するので注意が必要です。

主な消滅時効とは
10年 個人の貸金債権
5年 企業間の商取引などの商事債権
3年 事故による損害賠償債権
2年 商品の売掛債権、給与や賞与債権
1年 ホテルや旅館の宿泊料、料理店などの飲食料
6ヶ月 小切手債権

そして、権利を行使するとは単に請求を繰り返すだけでは足りないのです。

「私は2年間毎月売掛金の請求書を相手に送っていた。だから放置していたわけではない。」と主張しても通りません。

時効完成を防ぐには時効期間が過ぎる前に、「裁判所に提訴する」必要があります。

では、消滅時効直前に未回収の売掛金を思い出したらどうでしょう?そう簡単に提訴できるでしょうか?

こういう時に有効なのが内容証明です。消滅時効は1回に限って催告(内容証明で請求)を行えば、時効期間は6ヶ月伸びるのです。6ヶ月あれば自分で提訴するのも、弁護士に依頼するにも十分余裕ができます。

また、相手方があなたの請求に対して「支払うからもう少し待ってくれ」と回答して来たり、請求に応じて1円でも入金してくば「承認」したことになり時効期間はゼロにリセットされます。

よくいう「事件を犯してから~年逃げ切れば時効成立」というのは刑事訴訟法上の公訴時効といい、ここでいう消滅時効とは異なります。